軽貨物車両の自由化とは、今まで商業軽自動車に限られていた配送業務が、一般軽乗用車でも配達が可能になるという制限の解除になります。

国土交通省は、2022年6月に行われた規制改革実施計画で軽乗用車の活用が検討(貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用について)され同年8月に貨物運送事業での軽乗用車の使用を解禁すると発表しました。

軽貨物車両の自由化によって今までと何が変わるのか、軽貨物車両の自由化の開始時期、使える軽乗用車、事業用ナンバー(黒ナンバー)への登録方法などをご紹介します。

軽貨物車両自由化の開始時期

軽貨物自動車運送事業者に対する主な安全規制
軽貨物自動車運送事業者に対する主な安全規制

軽貨物車両の自由化の開始時期は2022年10月24日と国土交通省からパブリックコメントを実施した上で発表がありました。

10月27日以降に事業用自動車等連絡書の交付を受けた事業者から適用する形となります。

パブリックコメントとは、規制の設定又は改廃等にあたり、政省令等の案を公表し、この案に対して国民から集めた意見・情報を考慮して意思決定を行う手続です。

貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用についてのパブリックコメントについては、すでに意見募集は終了しているので、意見・情報の提出はできません。

貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用についてのパブリックコメント

軽貨物車両自由化でこう変わる

届出に係る軽自動車の乗車定員、最大積載量及び構造等が貨物自動車運送事業の用に供ものとして不適切なものでないこと(原則として乗車定員は2名以下とする。)

貨物軽自動車運送事業の経営届出等の取扱について
今まで貨物として登録できた車両条件
  • 物品積載設備の床面積が0.6㎡以上あること。
  • 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備の床面積が、この場合の乗車設備の床面積より大きいこと。
  • 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備に積載し得る貨物の重量が、この場合の乗車設備に乗車し得る人員の重量より大きいこと。
  • 側面又は後面に開口部の縦及び横の有効長さがそれぞれ縦600mm横800mm以上で、かつ、鉛直面への投影面積が0.48m2以上の大きさの物品積卸口を備えたものであること。
  • 最大積載量350Kg以下の自動車で乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造と認められるもの。
  • 自動車の運転者席の後方がすべて幌で覆われた物品積載装置であって、運転者席と物品積載装置との間に乗車人員が移動できないような完全な隔壁があること。
  • 物品積載装置内に設けられた座席は、そのすべてが折りたたみ式又は脱着式の構造のもので、折りたたんだ場合又は取り外した場合に乗車設備が残らず貨物の積載に支障のない構造のものであること。

今までは、貨物車として認定されていた軽自動車(N-VAN、エブリイ、ハイゼットカーゴ、NV100クリッパー、ピクシスバン、ミニキャブバン、スクラムバン、サンバーバン、アトレーなど)でしか原則配送業務が行えませんでしたが、軽貨物車両が自由化されれば、一般軽乗用車でも事業用登録すれば配送が可能になります。

軽貨物車両の自由化が開始されても配送業務を行う場合は、車両を事業用登録(黄色ナンバーから黒ナンバーへの変更)手続きする必要があります。(事業用ナンバー登録方法についてはページ下に記載)

今まででも軽乗用車で配送業務を行うことができましたが、荷室のサイズを規定サイズ(物品積載設備の床面積が0.6㎡以上)を超えるように構造変更が必要でした。

今回の軽貨物車両の自由化によって、このような構造変更も必要なく配送業務が行えるようになりました。

ただし、軽乗用車で積載できる貨物の重量は乗車定員人数1人分を55kgとし、乗車定員が4人でドライバーのみの場合は165kgまでが貨物の最大積載量となります。

一般的な貨物車(軽バン)の最大積載量は350kgなので、軽乗用車で配送業務を行う場合は荷量には気をつける必要があります。

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事業用ナンバー(黒ナンバー)登録方法

事業用ナンバー(黒ナンバー)の登録のためには、車両登録住所管轄の運輸支局と軽自動車検査協会の2カ所に行く必要があります。

運輸支局では事業用ナンバー取得のための登録手続きを行います。

運輸支局で発行してもらった印鑑付きの証明書を持って軽自動車検査協会で事業用ナンバーの実物をもらいます。

必要書類が整っていれば1日で事業用ナンバーを発行してもらえます。

必要書類や詳しい手順などは別ページでご紹介していますので、そちらもご覧ください。

国土交通省が軽貨物車両の自由化を推し進める背景

宅配便取扱個数の推移
宅配便取扱個数の推移

国土交通省が発表するデータによると宅配便の取扱個数は年々増えていて、2021年度は過去最高の49億5323万個(前年度比2.4%増)と発表されています。

また、政府の副業解禁の流れによってUber Eats(ウーバーイーツ)や出前館と言ったフードデリバリーサービスの今後はより普及していくことが予想されています。

このような背景があり、政府は配送業界の車両不足を懸念しています。

軽貨物車両の自由化は配送業界の車両不足解消に向けた政府の施策になります。

軽貨物車両の自由化で懸念されること

軽貨物車両が自由化されれば、今まで車不足で物理的に配送が不可能だった荷物が運べるようになりますが懸念点もあります。

一つに、配送ドライバーのサービス低下です。

配送業務は実はとても多岐に渡る専門的なスキルです。

例えば、宅配業務ですが50個の荷物を配送順番にコース組みする能力、その荷物をコースの順番通りに車に積み込むスキル、狭い住宅地を運転するスキル、住宅地の路上に駐車して駐車監視員に違反切符を切られる前に車に戻ってくるスキルと細かく配送業務を見ると多岐に渡ったスキルが必要になります。

このような制約のある条件の下で、これから配送業を始める方たちが時間通り荷物を決まった場所に届けられるかと言ったら疑問です。

今までのドライバーは現場に出る前に所属会社の管理下のもと横に乗って指導するのが礼儀となっていたので、素人のドライバーが現場に出ても大きなトラブルがなく済んでいました。

軽貨物車両が自由化されれば、このように面倒を見てくれる人がいない中でいきなり現場デビューになるので配送ドライバーのサービス低下は懸念されます。

また、軽貨物車両の自由化に伴って今までの軽貨物=軽バンではなくなります。

これによって、荷主が発注する段階で荷物の量によって配送する車を指定しなければいけなくなるわけですが、この当たり前の概念を変えなくてはいけなくります。

例えば、今までだったら700kgの荷物を軽バン2台配送していたから、軽貨物車2台は注したら1台軽乗用車でもう1台頼まなければいけなくなった。などのトラブルが頻発することが懸念されます。

これがチャーター便(緊急便)だったら指定した荷物が届かないことになり、大きな損害へと発展するケースも考えられます。

軽貨物車両の自由化はこのような懸念点もあることは忘れてはいけません。

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