2024年問題とは、⾃動⾞運転業務の働き方改革として⻑時間労働削減を目的に2024年に法改正が行われる事で発生する事が懸念されている問題のことです。

働き方改革は、厚生労働省が推奨している働く人が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革のことですが、物流業界の時間外労働の上限に規制が入ることになりました。

ページ後半では2024年問題によって、軽貨物業界にどのような影響をもたらすのかにも言及していますので参考にしていただければと思います。

2024年に物流業界で懸念されている内容

今までのように荷物が届けられなくなる

トラックドライバーの長時間労働が規制されると、長距離移動で運べる荷物にも影響が発生します。

現在の宅配の荷物は集荷されたものはその日のうちに各エリアごとに振り分けられて即日大型のトラックで各地に配送される仕組みです。

近距離の配送であれば問題はそこまで発生しませんが、大阪から宮城県などのような長距離移動の荷物は、ドライバーの労働時間が規制されることで荷物を運ぶドライバーが不足することになり、荷物が運べなくなる問題が発生します。

2024年問題によって現在の荷量の35%が運べなくなると言われています。

物流事業者・トラックドライバーの収入減少

2024年問題で運べる荷物が減るので、物流事業者(企業)は売上の減少を余儀なくされます。

今までのように当日集荷、当日出荷ができれば倉庫のスペースには集荷の荷物がある時間が限られているので倉庫を効率的に活かせましたが、2024年問題によって当日集荷、当日出荷が出来なくなるので倉庫に置く荷物が増えることになります。

この倉庫問題によって、現在のスペースだけでは足りずに追加の倉庫が必要になり、経費が増える物流事業者が発生します。

トラックドライバーは労働時間が制限されることで残業代が減り収入が減ります。

トラックドライバーは収入が減る事で離職率が上昇し、物流事業者はさらに運べる荷物が減るという悪循環が発生します。

2024年問題では物流事業者の倒産も懸念されています。

また、2023年10月1日からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)も開始されます。

インボイス制度が始まると、今まで課税売上1,000万円未満の軽貨物ドライバーも消費税の支払い義務が生じることになり、収入はその分減ることになります。

インボイス制度については、別ページの『軽貨物ドライバーとインボイス制度の関係を簡単に解説【図解あり】』をご覧ください。

荷主側の運賃上昇

佐川急便は2017年の価格改定以降、燃料価格や人件費などのコスト上昇に対し、ITを活用した生産性の向上や輸送ネットワークへの投資、効率化など、さまざまな対策を講じてまいりました。

一方、現在、以下のような大きな環境変化が生じております。

  • エネルギーや施設・車両等の価格高騰および労働コストの上昇
  • 物流の2024年問題に対応した従業員とパートナー企業さまの労働環境改善
  • 顧客ニーズに対応したサービス品質の維持・向上

このような状況の中、将来的にも継続して安全かつ安定した物流を提供し続けるため、2017年以降未改定であった「飛脚宅配便(飛脚クール便含む)」「飛脚特定信書便」「飛脚ラージサイズ宅配便」の運賃を以下の通り改定いたします。

佐川急便

2024年問題によって今まで通り事業を継続させるため運賃を上げる物流事業者も出てくることが予想されます。

現に物流大手のヤマト運輸では2024年問題対策として平均で10%の値上げ、佐川急便は平均で約8%値上げを行うと発表しています。(2023年4月料金)

2024年問題対策として物流各社運賃の値上げはさらに加速することが予想されます。

法改正のポイント【労働基準法第36条】

時間外労働をさせるには、以下の事項について、労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ていなければならない。この協定は、本条項に因んで『36サブロク協定』と通称される。

  1. 時間外労働をさせることができる労働者の範囲
  2. 対象期間協定が有効となる期間。協定成立・届出から最大1年間。一般に毎年更新する。
  3. 時間外労働をさせることができる場合
  4. 時間外労働をさせることができる時間または休日の日数1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について規定する必要がある。
    1. 1日について延長することができる時間制限はない。休日出勤については、一般的な勤務時間を想定し8時間などを指定しておく必要がある。
    2. 1箇月について延長することができる時間最大45時間ただし、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合にあっては最大100時間まで定めることができる(特別条項)年間6回を上限として45時間を超えることのできる月数
    3. 1年について延長することができる時間最大360時間ただし、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合にあっては最大720時間まで定めることができる(特別条項)
  5. 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
労働基準法第36条

2024年問題の対象となっている法改正は労働基準法第36条です。

労働基準法第36条では、法定労働時間を超えた場合について定められている法律ですが、法定労働時間は労働基準法第32条で週休2日制を前提として1日8時間以上の労働は禁止、1週間では40時間以上としています。

1日の労働時間を8時間未満とする、例えば6日間のうち、7時間を5日間・5時間を1日間とすることで、週勤6日とすることは可能であるとしています。

これを超える労働は残業になりますが、法改正以前は残業時間に制限がありませんでした

2024年4月からは残業時間の上限は原則月45時間・年360時間(1年単位の変形労働時間制を採用する場合、⽉42時間・年320時間)とし、特別の事情がなければこれを超えることはできなくなります。

特別の事情があって労使が合意する場合でも年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。

また、原則月45時間を超えることができるのは、年間6カ⽉までとなり永続的な残業時間の延長は認められていません。

労働基準法第36条を違反する使用者は6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑の対象となります

36(サブロク)協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

36協定記載例
36協定記載例

36(サブロク)協定とは、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合に締結する労使協定です。

36協定は所轄労働基準監督署長への届出が必要です。

36協定の作成は厚生労働省が運営する36協定作成ツールを使うとスムーズに作成できます。

なお、36協定を締結する際は労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との締結が義務付けられています。

適正に締結されていない36協定は無効になり、労働者に法定外の時間外・休日労働を行わせることはできません。

36協定を締結することで法定労働時間を超えての労働が規制解除されるわけですが、使用者は時間外労働・休日労働を必要最小限にすることを求められています。

2024年対策として事業者ができること

日常業務の効率化

労働時間削減のために日常業務の効率化は効果があります。

特に物流業界はまだまだ古い慣習が根強く残っている業界なので、2024年問題を機に抜本的な日常業務の効率化に着手するようにしましょう。

具体的には、非対面点呼の促進・書面の電子化・在宅勤務の促進などがあります。

日常業務効率化のポイントはスマートフォンを始めとしたITを積極的に活用することです。

例えば、点呼はzoomなどの無料ビデオ通話、日報はクラウドツール、またまだ試験的ではありますがドローン配送も確率されれば渋滞などのトラブルに遭う事もなく支店間の配送を迅速に行う事ができるようになります。

外国人・シニア・女性ドライバーの確保

2024年問題でドライバー不足を解消するために、積極的に外国人・シニア・女性ドライバーの確保に努める必要があります。

外国人・シニア・女性ドライバー確保のためには、職場環境の改善が必要になります。

日本語が堪能な外国人だけでなく、日本語に不慣れな外国人も採用し仕事を通して成長させることや、外国人対応のためにスタッフにも外国語を話せる人材を増やすなどの施策が考えられます。

シニアの採用に関しては、短時間の業務を割り振るなどして対応しましょう。

女性ドライバーに関しては、昨今物流業界でも増えてきましたが、それでも現状、物流業界は男性の職場の強い仕事です。

女性が働きやすい職場環境の整備(職場の雰囲気・社内コミュニケーション・有給が取りやすい)は継続して改善を続ける必要があります。

倉庫シェアリングの準備

2024年問題によって、荷物が倉庫に留まる時間が長くなることから近隣倉庫とのシェアリング環境を整えておくことも効果的です。

倉庫シェアリングとは、倉庫を手軽にレンタルできるサービスです。

繁忙期のみの一時保管用倉庫としても使う事ができます。

また長距離便の中継地としても使う事ができます。

ロボット導入

工場内作業にロボットを導入することで労働時間の削減に繋がります。

また、ロボット導入では労働時間の削減だけでなく人件費の削減に繋がる事で、削減分を長距離ドライバーに回せるようになります。

給与アップなどでドライバーの長期雇用が望めるようになりドライバー不足解消の一手となります。

ロボット導入は初期費用がかかるのがネックになりますが、メタバースを使う事で効率的に導入することが可能です。

メタバースとは、インターネット上の仮想空間の意味で、仮想空間に工場とロボットを作り出しロボット導入時のメリット・デメリットが見えるようになります。

メタバースに関しては、メタバース総研にて詳しい導入手順などがありますので、そちらを参考にしてください。

また金融機関からは融資以外にファクタリングという方法も資金調達の手段としては有効です。

ファクタリングとは、債権買取の意味になりますが、簡単に説明すると売掛金の買取制度です。

金融機関の融資では、早くても一か月程度の期間が必要になりますが、ファクタリングであれば即日で資金を用意してくれるところもあります。

融資やファクタリングを上手く使ってロボット導入のための資金源としましょう。

入金サイクルの交渉

2024年問題によって、資金繰りに悩み事業者が増えることが予想されるので、資金繰りを少しでも楽にするために荷主への支払いサイクルの改善交渉を行いましょう。

物流業界の特有の悪しき商習慣として入金2ヵ月の支払いサイクル(60日サイト)があります。

今月の支払い分が60日後に支払われる商習慣ですが、この商習慣に意味は特にありません。

強いて言えば二次請け業者が60日サイトだから、下請けも同様に60日サイトとなっているケースがあります。

この支払いサイクルの商習慣を交渉して掛取引の一般的な30日サイト(月末締め翌月末払い)に変更してもらうようにすることで経営はかなり楽になり、経営は安定します。

2024年問題によって軽貨物業界はどうなる?

2024年問題は一般貨物業界にとっては大きな問題を抱えていますが、軽貨物業界にはプラスの影響となるケースが予想されています。

一つに、残業代削減で給与不足となり一般貨物ドライバーが軽貨物ドライバーに転身してくることが考えられます。

軽貨物ドライバーは個人事業主なので2024年問題の労働時間規制の対象外です。(軽貨物委託会社のスタッフは労働時間規制の対象です)

また、2024年問題によって荷物が細分化されることになるので、軽貨物の案件が増えます。

ただし、2024年問題が軽貨物業界にプラスであっても、実際に軽貨物ドライバーに転身して稼げるかどうかは別問題です。

軽貨物ドライバーに転身するのであれば、焦らずにしっかりと安定した案件のある委託会社を選ぶようにしてください。

2024年問題ポイントまとめ

  • 時間外労働の上限規制
  • ドライバー不足の加速
  • 運賃上昇
  • 物流事業者の利益減少
  • 法定時間外労働が発生する時は36協定を締結する

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